おかやまいっぽん街頭トークイベント第2弾 7/15開催報告

7月11日に施行された組織犯罪処罰法の改正、いわゆる「共謀罪法」をテーマに、平成27年度岡山弁護士会副会長で、刑事事件に詳しい賀川進太郎弁護士をお招きし、街頭トークイベントの第2弾を7月15日正午、岡山駅西口さんすて前で開催しました。
前回同様、共同代表の宮本龍門がMCをつとめ、賀川先生と二人で一時間トーク。共謀罪法が施行された今、真っ当な市民運動をしている市民がこの法律に「委縮」しないように、その内容を正しく理解することを目的としました。

Q1. 「共謀罪法」という法律のポイントは?

A. 共謀罪法は「テロ等準備罪法」とも呼ばれるが、テロに特化しているわけではなく、その対象は犯罪全般にわたるものだ。ポイントは、捜査や取り調べをするための根拠となる「嫌疑」が犯罪の「実行行為」ではなく、「共謀」で良いというところにある。

Q2. そもそも「共謀」をどう判断するのか?

A. 犯罪の実行行為がない段階で、警察が「犯罪の準備行為」だと判断することなどできるのか、そこにこの法律の問題があるし、そもそも「準備行為」には限定がない。なので、恣意的な運用も可能、と言わざるを得ない。一方で、当然のことだが、捜査や取り調べに持ち込むためにはそれなりの根拠が必要となる。そこで出てくるのが「通信傍受法」だ。一応現段階では、共謀罪は通信傍受法の対象犯罪にはなっていないが、今後はわからない。

Q3. 犯罪の抑止につながるのか?

A. 「自首規定」というものが新たに盛り込まれているが、これがどのような作用をもたらすか、今後注視していく必要がある。刑事事件に数多く携わって来た経験から言えば、人間は犯罪をしようと一度思ったとしても、やめるチャンスは何度もあり、実際にやめる人間は多い。例えば何人かのグループで犯罪の共謀と準備がなされた場合、共謀罪法の施行以前は、実行に移す前にそのグループから抜けた者は無罪であったが、今後はその者にも「共謀罪」が成立することになる。つまり一度共謀すれば、抜けても抜けなくても同じだ、ということだ。本当にそれで犯罪の抑止につながるのだろうか?一応、それに対応するために自首規定を設けており、自首すれば「刑の減軽または免除」ということになっているが、「自首」というのはつまり仲間を裏切る行為である。これまで刑事事件に携わって来た私の感覚で言うと、多くの人間は普通そういうことはしない。

Q4. 市民運動への影響は?

A. 「委縮」が一番大きな影響だろう。277ある対象犯罪の中には、例えば「威力業務妨害罪」というのがある。これは、沖縄の辺野古基地移転反対運動で座り込みで工事車両を止めたり、原発再稼働反対運動で原発施設の入り口を封鎖したりする行為が該当するかもしれないが、一方でデモなどの普通の平和的な街頭行動は全く該当しない。しかし、実行行為ではなく「共謀」という実態のよくわからないところで捕まってしまうというこの法律の性質から、漠然とした不安や恐怖感を持つ市民の方々も多いだろう。大切なのは正しい知識を持ち、毅然と対応していくことだ。

Q5. 警察が「準備行為」だと解釈すれば、誰でも捜査や取り調べの対象になるということだが、いざそういう状況になったら、市民はどう対応すれば良いか?

A. 何より先ずは弁護士を呼ぶことだ。弁護士が来るまでは「黙秘権」を行使した方が良い。任意同行を求められた時は、同行をした上で、弁護士を呼ぼう。任意同行は拒否も可能だが、拒否を繰り返すと裁判所が逮捕状を出すこともある。

Q6. 海外と比較するとどうなの?
A. 日弁連国選弁護シンポジウム実行委員として、欧米等をよく視察しているが、確かにアメリカにも共謀罪法はある。しかし同時に、被疑者の人権もしっかりと守られる仕組みになっている。例えば「取り調べの可視化」や「弁護士の立会権」がしっかりと認められているほか、拘留時間も24時間と限定されている。日本はどうかと言うと、「取り調べの可視化」はない。今回の共謀罪法については維新の党が「取り調べの可視化」を付帯したが、あくまでも今後の努力規定であり義務にはなっていない。また、「取り調べの可視化」というのは逮捕された後の話であって、任意聴取などは含まれない。「弁護士の立会権」も日本にはなく、拘留時間にいたっては20日間という超長時間におよぶ。警察捜査のオプションが多いことは悪いことではないが、人権擁護の観点も同様に重要だと考える。

Q7. 賛否両論がある中で、参院法務委員会では「中間報告」という苦肉の策まで使って通過させた共謀罪法であるが、そこまで強引に押し切ってしまうということは日本では犯罪が増えているってこと?

A. 驚いてしまうかもしれないが、その逆である。日本では、ピークだった2002年と比較して現在は約半分にまで減少している。他殺被害者(殺人)数も年々減ってきており、平成27年度は約300人であった。もちろん人命は何より尊いものだ。300人だから良いというわけでは決してないし、限りなくゼロに近づける努力が必要だということは言うまでもない。しかし一方で、この数字を世界と比較すると、日本は圧倒的に殺人が少ない国だということが良くわかる。刑務所は空き部屋が増えているし、少子化の影響からか未成年の犯罪もすごく減っている。

Q8. 共謀罪法は憲法違反だという意見もあるが?

A. 日本国憲法第31条には「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とあり、同33条には「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とある。つまり、何をすれば処罰されるのか、ということを法律は明示しておかなければいけない。その点で共謀罪法はどうか?「準備行為」なるものには限定がなく、ひじょうに曖昧だ。違憲の可能性は大きいだろう。
以上、要旨のみですがトークの内容でした。
岡山大学名誉教授の小畑隆資先生をお招きした前回も好評でしたが、今回は80名以上の方が立ち止まり、お話を聞いて下さいました。

暑い中ご参加いただいた皆様、関係者の皆様、ありがとうございました。

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